総務マニュアルを作成するメリットを紹介
業務内容が多岐に渡る総務だからこそ適切にマニュアルを使用することで、様々なメリットがあります。本章では、総務ならではのマニュアルを作成するメリットを解説します。
作業の時短になる
総務には文書管理、施設管理、人事労務、経理業務など多岐にわたる業務があります。これらの仕事は複雑で、適切な手順や必要な情報が欠けてしまうと、作業時間が長くなってしまいます。特に、作業に慣れていない新人にとっては大変です。
しかし、マニュアルがあれば、各業務の手順や必要な情報を明確に記載し、作業効率が向上します。新入社員や他部署からの総務業務依頼もスムーズに処理できるため、作業の時短につながります。
コストが削減できる
総務の業務では、適切な手順や情報の不足により、時間や人的コストがかかりがちです。例えば、人事手続きや給与に関する業務でも、不備や手続き漏れが発生すれば、修正に時間と労力がかかってしまいます。
しかし、マニュアル通りにミスのない業務をできるようにしていれば、そもそも作業の重複や不必要な手間がかかりません。すると、業務の手順や必要な情報が明確になり、やり直しやミスを防げます。マニュアルを用意することで、効率的なコスト削減ができます。
品質が向上する
総務の仕事には、正確で効率的な業務処理や情報の適切な管理、顧客や社内スタッフへの迅速かつ丁寧な対応が含まれます。しかし、業務が複雑で、手順や情報が不明確な場合、品質を保てなくなります。
総務マニュアルを作成することで、複雑な作業が整理され、適切な方法が明確になると作業の品質が向上します。また、マニュアルがあれば、新入社員や他部署への依頼でも、対応がしやすくなるため、総務業務全体の品質が向上します。
評価基準になる
総務マニュアルは、業務の標準化ができるだけでなく、評価基準にもなります。マニュアルがあることで、業務の手順や基準が明確化され、従業員の業務を統一化できます。
例えば、マニュアルを一つの基準とし、指示通りの業務やサービスができたら、一定の評価を与えます。上司や監督者は、マニュアルに基づいた業務遂行の品質や正確性を評価することができます。
一方、被評価者にとっても、評価基準がわかりやすく公平になり、不満を解消できます。このように、総務マニュアルは従業員の業務評価における基準としても効果を発揮します。
総務マニュアルを作成する懸念点
総務マニュアルを作成すると、様々なメリットを期待できますが、良い事ばかりではありません。本章では、総務マニュアルを作成することの懸念点を紹介します。
マニュアル通りにしかできなくなる
マニュアルに基づいて業務を遂行することは、一定の規律を保つ上で重要です。しかし、マニュアルに頼りすぎると、従業員の能力向上や状況に応じた柔軟な対応ができなくなりがちです。なぜなら、マニュアルがあると、自分で考えなくなってしまい、従業員の問題解決能力を奪う要因になりえるからです。
さらに、マニュアルに従えばよいので、創意工夫をする必要もなくなり対応の柔軟性も損なう恐れがあります。そうなると、組織全体の効率や成果に悪影響を及ぼす場合もあります。また、変化することに関心がなくなり、競争力が低下したり組織の発展に支障をきたすおそれもあります。
総務マニュアルを作成する際には、従業員がマニュアルをガイドとして活用しつつも、自ら判断し、適切な対応ができるような教育やトレーニングも加えることが必要です。
従業員のモチベーションが下がる
従業員のモチベーションを下げる理由は、マニュアルに縛られることで、従業員の自主性を制限するためです。例えば、総務の仕事でマニュアルに従うしかない場合、従業員は自分の能力やアイディアを発揮する機会が制限されます。
さらに、評価もマニュアルに準じているのであれば、それ以上のことをする必要性がなくなってしまいます。むしろ、無駄な努力のようになり、仕事に対する興味や熱意が薄れるおそれもあります。
このようになると、従業員はやる気を失います。結果、生産性や創造性が低下すると組織全体の成果に影響を及ぼします。
従業員のモチベーションが低下することは、組織にとって大きな懸念点です。企業へは、能力向上やアイディアを評価する場を設けるなどして、モチベーションを保つ取り組みが求められます。
総務マニュアルを作成する手順
総務マニュアルにはメリットも懸念点もありますが、それをふまえて、総務マニュアルを作成するとなれば、何から手を付ければよいのでしょうか。本章では、総務マニュアルを作成する時の手順を説明します。
どの業務をマニュアル化するかを決める
総務マニュアルの作成手順の第一歩は、マニュアル化する業務を決定することです。この段階では、総務の仕事の中で最も重要で、効果的に標準化される必要がある業務をピックアップしましょう。その業務を一番初めに決めることで、マニュアルに一貫性と統一感が醸成されます。
マニュアルにすべき業務は、日常業務において欠かせないタスクに加えて、新入社員や異動者が緊密な指導を必要とする業務や法的な規制や組織のポリシーに関連する業務が優先されます。
一方で、業務内容が極端に複雑だったり、柔軟に対応すべき変動性のある業務、むしろ簡単で一貫した手順を持つ業務は、マニュアル化する価値が低いかもしれません。どの業務をマニュアル化すべきか決めることからスタートです。
スケジュールを決める
続いて、マニュアル作成のスケジュールを決めます。まず、明確なスケジュールを設定することで、作業の進捗状況を把握し、目標の達成を確実にすることができます。
また、従業員や関係者に作業の時間枠を伝えることで、全体の調整がしやすくなります。スケジュールを決める際には、作業の優先順位を決定し、重要なタスクに適切な時間を割り当てます。人事手続きや法的規制に関連する業務など、緊急性や重要性が高い業務を優先することが重要です。
次に、作業の段階を明確にし、各段階に必要な時間を見積もります。最後に、予期せぬ遅延や問題に備えて、余裕を持ったスケジュールを設定することが重要です。適切なスケジューリングは、マニュアルの完成度を左右します。
マニュアルの内容や手順を整理
総務マニュアルを作成するにあたり、マニュアルの使いやすさと効果を高めるため内容や手順を整理します。マニュアルの内容を整理し、情報の重複や不足を避け、読者が読みやすくなるようにします。具体的な手順や手続きを明確にし、ステップごとにわかりやすく記載します。
マニュアルの内容や手順を整理する際には、読者の視点に立って検討することが重要です。従業員や関係者が最も求める情報や手順を重点的に整理し、必要な場合には例示や図表を活用して理解しやすくします。
課題や注意点を確認する
課題や注意点を確認しておくことも手順の1つです。これは、マニュアルの効果と品質を向上させるために重要なステップです。例えば、従業員の間でよくある間違いや分かりにくい業務手順、またはおこりがちな法的コンプライアンス違反などの問題点を特定します。
さらに、マニュアルの更新や改訂の際に発生する課題も考慮します。例えば、新しい規制や業務プロセスの変更に迅速に対応するための仕組みや、従業員からのフィードバックを収集してマニュアルの改善を行うプロセスなどが挙げられます。
総務マニュアルの作成における課題や注意点を確認することで、より効果的で使いやすいマニュアルを作成することができます。
運用と改善
総務マニュアル作成で忘れてはならないのは、マニュアルが実際の業務に適用され、必要に応じて改善されるプロセスまで行うことです。マニュアルの運用と改善をする際には、業務の効率性や品質の向上を促進するために、マニュアルの運用状況を定期的に確認します。
また、改訂されたマニュアルを適切に配布し、従業員が常に最新の情報を利用できるようにします。運用と改善までを実践することで、総務マニュアルは組織の効率性と品質を持続的に向上させる重要なツールになります。
総務マニュアルを作成するポイント
総務マニュアルを作成するには、業務の特性をふまえる必要があります。本章では総務マニュアルを作成する際のポイントを解説します。
5W1Hを明確に
総務マニュアルで5W1Hを明確にして作成することは大変重要です。総務の仕事は組織全体の運営を支援する業務の特性上、様々な部署や職種と関わります。そのため、行う仕事の5W1Hを把握していないと、円滑に業務を遂行することができなくなる可能性があります。
例えば、「Who(誰が)」の観点では、業務の担当者を明確にすることで、責任の所在が明確化され効率的にタスクを遂行できるようになります。また、「When(いつ)」の観点では、締め切りや期限など時間的制約を明確にし、業務のスケジュール管理を効果的に行うことができます。
「Why(なぜ)」の観点では、各業務がなぜ重要であるかを明確にすることで、従業員のモチベーションを高め、目標達成に意識を向けることができます。このように、5W1Hを明確にした総務マニュアルは、業務遂行をサポートし組織全体の効率性向上に貢献します。
全体像を示す
総務マニュアルの作成では、全体像を示しましょう。総務の仕事は多岐にわたり、人事、労務、給与、施設管理など幅広い業務を含みます。そのため、全体像を示すことで、従業員や関係者が総務部門の役割や範囲を理解しやすくなります。
例えば人事手続きなら、採用から退職手続きまでの一連の流れを示すことが重要です。例として、新入社員の採用プロセスでは、求人広告の掲載から面接、選考、入社手続きまでの流れを一覧で示し、必要な書類や手続きを明確に説明します。
そうすることで、新入社員や担当者はスムーズに手続きを進めることができます。全体像を示すことで、総務マニュアルは組織全体の効率性を向上させ、業務の遂行を支援します。
読みやすさを重視
総務マニュアルを作成する際は、読みやすくなるよう配慮しましょう。使用者が簡単に情報を見つけ、理解できるようにすることが円滑な業務遂行につながります。
例えば、強調や目次を活用するのはもちろん、見出しを適切に使うことで、情報の整理と理解を促進します。トピックを見出しで区切ると、さらにスムーズに情報を把握できるようになります。
図や画像を活用することも有効です。フローチャートや図表を挿入し、複雑なプロセスや関係性を視覚的に示します。また、写真やイラストを使って具体例や実践的な情報を提供し、読者の理解を深めます。
フォーマットを統一することも大切です。一貫したフォント、サイズ、レイアウトを使用して、読みやすくなるようにしましょう。
時系列で示す
総務マニュアルを作成する際には時系列で示すようにすると、使用者が業務手順やプロセスを理解しやすくなります。例えば、新入社員の研修マニュアルなら、入社手続き、オリエンテーション、業務トレーニングなどの順序を時系列で示します。
また、年次イベントや締め切りのような定期的な業務も時系列で示すことが重要です。そうすれば、使用者が、研修の一連の流れを理解しやすくなったり、重要な期限やタイミングを把握しやすくなります。このように、時系列で総務マニュアルを作成することで、業務の流れや期限も明確化され、業務を効率的に遂行しやすくなります。
総務マニュアル作成・運用時の注意点
総務マニュアル作成のポイントはわかりましたが、注意することはあるのでしょうか。本章では、総務マニュアルを作成したり運用したりする時の注意点をまとめます。
作業の目的を明記する
総務マニュアルを作成・運用する際の注意点の1つは、作業の目的を明記することです。目的が明確でないと、何のための業務かわからなくなり、円滑な業務遂行の妨げになるおそれがあります。
目的が明記されていると、使用者は意図を理解して業務にあたることができるので、目的に沿った行動や判断ができます。目的が明確な場合、マニュアルの改訂や更新が必要な場合にも、目的を基準に適切な対応が行えます。目的を明記したマニュアルの作成は、業務遂行を支援し組織全体の効率性を向上させます。
使用者の意見を収集する
総務マニュアルを作成・運用する際には、使用者の意見を集約しましょう。従業員や関係者からのフィードバックや意見を収集し、それをマニュアルの改善や更新に活かすことが重要です。
使用者の意見を集約する理由は、彼らが日々の業務を行う上で直面する問題や課題を把握し、マニュアルをより効果的に役立てるためです。
彼らの視点から得られた情報を基にマニュアルを改善することで、より使いやすく、適切な内容を提供することが可能です。使用者の意見を集約すると、総務マニュアルの質が上がり、組織全体の業務効率や使用者の満足度が向上します。
定期的に更新・見直しする
また、総務マニュアルは、定期的に更新・見直ししましょう。定期的な更新・見直しの理由は、新しい業務手順や規則の導入、法律や規制の変更、組織の構造変更など、様々な要因による情報の変化に対応するためです。これらの変化を反映させることで、従業員が最新の情報に基づいて業務を行うことができます。
例えば、法律や規制が変わる場合を考えてみましょう。労働法や税法の変更など、法的な要件が変わる場合、それに合わせてマニュアルを更新することで、組織が法令遵守を確実に行うことができます。
また、業務プロセスの改善や効率化を図るために、定期的な見直しを行い、古い手順や不要な情報を削除することで、マニュアル全体の使いやすさや効果を向上させることができます。このように、定期的な更新・見直しは、総務マニュアルの信頼性と実用性を維持するために不可欠です。
更新履歴は残す
総務マニュアルを作成・運用する際は、更新履歴を残しましょう。更新履歴を残す理由は、マニュアルが常に最新の情報だと確認しやすくするためです。
もし、更新される度に過去の情報が失われると、使用者が過去のバージョンと現行のバージョンとを比較できなくなります。更新履歴を残すと、過去の変更を確認し、必要に応じて遡って情報を参照することができます。
履歴があると、過去の変更や修正がどのような理由で行われたのかを把握することができます。また、更新履歴を残していると、各バージョン間の変更点を追跡し、不具合や問題が発生した場合に迅速に対応することができます。
クレーム対応の具体例を掲載する
総務マニュアルにクレーム対応の具体例を掲載するのは、クレームや苦情があった時に適切に対応できるようにするためです。例えば、クレームが寄せられた際の対応手順や、適切な言葉遣いや態度の示し方など、具体的な事例を示すことで、使用者が自信を持って対応できるようになります。
また、過去のクレーム対応事例を踏まえて、問題解決のヒントや成功事例を共有することで、同様の状況になった際に効果的な対応ができます。クレーム対応の具体例を掲載しておくことが、組織全体のサービス品質向上や顧客満足度の向上に繋がります。
総務マニュアル作成のおすすめツール
総務マニュアル作成の手順やポイント、注意点はわかりましたが、文書作成ソフトを使用して0から自力で作成するのは大変です。では、総務マニュアルを作成するのに適したツールにはどのようなものがあるでしょうか。
Microsoft
Microsoft(マイクロソフト)のWord・Excel・PowerPointはすでに多くの個人・企業で使用されているでしょう。こちらには、無料で提供されているテンプレートがたくさんあります。
テンプレートの内容はシンプルで、これまでに目にしたことがある人も多いでしょう。操作もわかりやすくなっているので、気軽に作成できます。
Googleドキュメント・スプレッドシート
Googleドキュメント・スプレッドシートは、Googleのアカウントがあれば無料で利用できるサービスです。Microsoftのワードやエクセルのような仕様になっていて、文章の作成や図表の作成ができます。
アプリ版もあるので、スマホやタブレットなどにインストールしても使用できます。テンプレートもあるので、簡単にマニュアルを作成できます。
Dropbox Paper
Dropbox Paperとは、オンライン文書作成ツールで、アメリカに本社があるDropbox社が提供しています。Dropboxのアカウントがあればすぐに利用できます。作成した文章はDropboxで保存され、編集も簡単にできます。ページの区切りがないので、一連の工程をつなげて記載・表示することができます。
また、見出しを指定して文章を書くと、目次が自動で生成されるなど、マニュアル作成に役立つ機能がたくさんあります。ただこちらは画面上で参照することを想定した作りになっているので、紙での印刷には向きません。
Stock
Stockは、社内の情報をストックできるツールです。テキスト情報や画像ファイルなども簡単に保存できます。機能は大変シンプルで、感覚的に使用できます。テキスト形式に画像などもあるマニュアル作成に適しています。さらに、ビジネスチャットツールのSlackやChatworkとも連携できて便利です。
なお、Stockを使用するには料金がかかり、ストレージ数によって金額が異なります。興味がある方は、無料でためせるフリープランもありますので活用してみるとよいでしょう。
アウトソーシング
総務マニュアルを社内で作成するには、様々なコストがかかります。であれば、思い切って外部委託するのも有効な手段です。
外部の専門家やコンサルタントにマニュアル作成を委託すれば、豊富な経験と知識で、組織のニーズや要件に合わせたマニュアルを提供してくれるでしょう。アウトソーシングを利用することで、組織内のリソースを効果的に活用し、高品質な総務マニュアルを効率的に作成することができます。
まとめ
本記事では、総務ならではのマニュアル作成のポイントや、作成の手順を徹底的に解説しました。また、作成・運用時の注意点やおすすめのツールも紹介しました。
総務は仕事の特性上、マニュアル作成で気を付けることがあります。この記事を読んで、効果的なマニュアル作成に役立ててください。