働き改革が推進される現代において、残業を減らすことがどの企業でも取り組んでいる課題ではないでしょうか。そのため、残業を減らす取り組みについて知りたいと思っている方もいるかと思います。
今回は、残業を減らす取り組みから具体的な方法や成功事例も併せてご紹介します。残業を減らす取り組みについてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
残業を減らす取り組み8選
残業を減らす取り組みとして、おすすめなのが以下の8つです。
業務内容の見直しを行う
残業を減らす取り組みとして、まずは業務内容の見直しを行いましょう。業務内容・時間・方法、全体の流れなどを可視化し、改善点がないか検討します。
1日で対応可能な業務量を明確にし、現在の業務内容が適切なのか、さらに効率良く行う方法はないかといった視点で見直すとよいでしょう。
マニュアルやツールを利用し業務効率化をする
業務効率化は、残業を減らすための重要な手段の1つです。この目的を達成する方法として、マニュアルやツールの利用があります。
マニュアルを用いることで、業務のスキルや品質を統一し、ノウハウを共有することが可能になります。それにより業務がスムーズに進み、残業時間を削減できます。
また、ツールを活用することで、人的ミスの減少、手作業で行っていた業務を効率化できるため、残業の削減につながります。
業務内容や進捗について共有する
業務内容や進捗について共有し、従業員全体で助け合うことが可能です。業務内容や進捗について共有できていないと、担当者不在時に別の従業員が対応した際に普段よりも業務にかかる時間が増え、残業につながりやすくなります。
さらに、各従業員が業務を過剰に抱えていないか、進捗状況を共有することで、一人ひとりの業務量を適切に管理することができます。これにより、業務の負担を軽減し、結果的に残業時間も削減できます。
業務の属人化を防ぎ負担を分散させる
業務の中には、属人化してしまうものもゼロではありません。属人化すると特定の従業員への負担が大きくなり、残業につながりやすくなります。そのため、業務の属人化を防ぐために業務負担の分散が必要です。
属人化を防ぐためには、管理職が業務の振り分けを適切に管理することが重要です。そのために、マニュアルを作成し、誰が担当になっても業務をこなせるようにします。これにより、特定の従業員に負担が集中するのを防ぎ、社内全体で残業を減らすことができます。
従業員の労働時間を正確に把握できる仕組み作りをする
従業員の労働時間を正確に把握できるようになると、自分自身の労働時間を明確にできます。働きすぎに気づくことで、残業を減らす意識づけにも繋がるでしょう。
残業時間を自己申告で行っている場合、実際の勤務時間と異なり過大申告している可能性もゼロではありません。
労働時間を正しく知るためには、従業員全員が労働時間を閲覧できる仕組み作りが必要です。勤怠管理システムの導入やパソコンのログ、タイムカードによる管理をし、労働時間を可視化できると従業員の労働時間を正確に把握できるようになります。
残業しない日を設定する
残業を減らすための1つの方法として、「ノー残業デー」の設定が効果的です。例えば、「毎週特定の曜日は残業しない日」と定めることで、組織全体で残業をしない文化を築くことができます。
この取り組みは全従業員を対象とし、上司や部下に関わらず、全員が定時で退社することが重要です。
また、残業しない日を設定する場合は、従業員のモチベーションや実行につながる工夫が必要です。例を挙げると、評価項目に設定し守れたら賞与への加算や、ノー残業デーに残業せざるを得ない場合は別の日に残業せず退社するなどがあります。
残業する時には事前申告制にする
残業を減らすために、事前申告制を導入することもおすすめです。この制度では、従業員が残業する際には事前に申告し、許可を得る必要があります。
これにより、従業員はダラダラと残業を続けるのではなく、事前に業務を計画的に終える意識が高まります。
さらに、管理職は従業員の残業時間を把握しやすくなり、必要に応じて業務の調整がしやすくなるため、残業の発生を抑えることが可能です。
事前申告制を導入する場合は、「いつ・おおよその残業時間・残業理由」などと具体的に申告するといったルール設定も重要です。
状況に応じて外部委託を利用する
状況に応じて外部委託を利用することも、残業を減らすために効果的な方法です。外部委託する業務の例として、事務作業や電話対応など、必ずしも従業員が対応する必要のない業務が挙げられます。
属人化を防ぐためには、管理職が業務の振り分けを適切に管理することが重要です。そのために、マニュアルを作成し、誰が担当になっても業務をこなせるようにします。これにより、特定の従業員に負担が集中するのを防ぎ、社内全体で残業を減らすことができます。
残業を減らす取り組みをし成功した7つの事例
ここでは、残業を減らす取り組みをし、成功した7つの事例を紹介します。
株式会社ニチレイロジグループ本社
株式会社ニチレイロジグループでは、グループ全体で業務革新施策の一環で事務作業の一部をRPAによる自動化する取り組みを開始しました。この取り組みの特徴は、IT部門ではなく各事業所の従業員がシナリオ作成をし、自ら業務を変革することです。
また、取り組みを支援するため研修などを実施し、シナリオの作成者だけではなくサポートに入る従業員も含め、事業所一体で活動を進めました。その結果、ワークライフバランスも向上し、残業を減らすことに成功したのです。
カルビー株式会社
カルビー株式会社では、多様な働き方・効率的な働き方を支える取り組みが実施されています。その中でも、以下のような取り組みを行うことで残業時間を減らすことに成功しています。
・早帰りを推奨する「早く帰るデー」の設定
・フルフレックスタイム制度の導入
・サマータイムの導入
・営業社員の直行・直帰推進
「早く帰るデー」では、早く帰ることを意識づけるために16時になると早帰り促進の音楽が流れます。早帰りの推奨日を設定するだけではなく、早く帰る雰囲気作りまで実施しているという特徴を持っています。また、限られた時間内で業務ができるように業務改善も行われています。
株式会社ピコナ
株式会社ピコナでは、「残業チケット制」というユニークな制度を採用して、残業時間の削減に取り組んでいます。
この制度では、従業員は社長の承認が必要な申請チケットを使って残業を申請しますが、1人あたり月に7枚までしかチケットが配布されません。実際の作業状況によっては申請が却下されることもあります。この制度の導入により、従業員の時間管理に対する意識が大幅に向上しました。
さらに、グループウェアを導入して社内のコミュニケーションを効率化。これにより、案件ごとの情報をリアルタイムで共有できるようになり、紙ベースだった事務手続きもデジタル化。
この結果、社内の無駄が削減され、残業の減少につながりました。
SCSK株式会社
SCSK株式会社では、2013年より残業を減らすために「スマートワーク・チャレンジ20」を実施しています。これは、残業時間を前年度より20%削減、有給休暇20日完全取得を目指したものです。
具体的な取り組み内容の例は、こちらです。
・削減した残業代を従業員へ還元する
・管理職を含む全従業員が実勤務時間を記録
・月間80時間超の残業は社長承認が必要
・多忙なプロジェクトには他部署から応援や異動にて人員を投入する
・ノー残業デーの推進
・17時以降は会議禁止
従業員自らこれらの取り組みを積極的に行ったことから、残業を減らすことに成功しています。
株式会社山崎文栄堂
株式会社山崎文栄堂では、ExcelやWordでマニュアル作成していましたが、そのファイルの保存場所が点在し欲しい時に見つけられないという問題を抱えていました。
そのため、マニュアル作成者に直接確認するといった流れができてしまい、ムダな時間が生まれていたそうです。
そこで、マニュアル作成ツールを導入したところマニュアルへのアクセスが容易となり、マニュアルを探すといったムダな時間を省くことに成功しました。また、ツールの導入により業務に費やす時間が大幅に削減され、結果として残業時間の削減にも繋がっています。
株式会社大和証券グループ本社
株式会社大和証券グループ本社では、2007年より従業員が限られた時間の中で効率的に働ける環境整備を始めています。仕事も生活も全力で取り組む「ワークハード・ライフハード」をモットーにし、19時前退社が導入されました。
19時前退社が実施できるように、複数の部署が協同する業務や会議に関してはガイドラインを策定、実施状況を定期的に人事部が確認するなどを実施しています。
退社時間が決まっていることから、時間内で効率よく成果を上げる方法を個々で考えるようになり、残業を減らすことに成功しました。
キヤノン株式会社
キヤノン株式会社では、残業を減らすためにノー残業デーを導入しています。1995年から導入されていますが、2017年よりさらなる徹底を図るために実施しているのが以下3つです。
・アナウンスと音楽放送
・巡視の実施
・特定部門にて複合機操作パネルへの表示
毎週水曜日は始業時に定時退社を全館にアナウンスし、就業時間になると退社を促す合図として従業員がセレクトした音楽が流れます。また、18時過ぎには人事部門の管理職が館内を巡視し、その時点での残っている人数を数えます。
さらに特定の部門では複合機を操作した際に、定時退社促進のメッセージが表示されるように設定されており、このような取り組みを実施したことで残業を減らすことができました。
残業を減らす取り組みが加速している3つの背景
残業を減らす取り組みが加速している背景として考えられるのがこちらの3つです。
働き方改革を実現するため
働き方改革では、目的の1つにワークライフバランス実現のための長時間労働の抑制が挙げられています。これにより、適切な勤怠管理や柔軟な働き方ができる制度新設が必要となりました。
また、働き方改革関連法の施行により残業時間の上限規制が定められています。残業時間が増えると法に抵触する可能性もゼロではありません。このように、働き方改革を実現するために残業を減らす取り組みが加速しています。
生産性を向上させるため
残業が増える原因である生産性の低さは、多くの日本企業の課題です。残業している人がいると退社しにくい、仕事を終わらせても誰かの仕事が割り振られるなどが起きており、結果として残業が発生しています。
時間内に終わるはずの業務を続けることは、生産性を低くする原因です。生産性を向上させるためには業務の密度を高めることが必要であり、決められた時間内で業務を終わらすことが求められています。
このように業務の密度を高め生産性を向上させるために、残業時間を減らすことが必要です。
従業員の健康を保つため
残業が増えると、従業員には疲労やストレスなどの身体面・精神面の両方から大きな負担がかかります。負担が解消されないまま業務を続けてしまうと、健康被害を起こすリスクが高くなります。
残業時間を減らすと早く帰宅できるだけではなく、休息や趣味の時間が増えることになります。また、従業員の健康が保てないと離職の原因にもなりかねません。
離職防止という観点からも従業員の健康を保つことが必要であり、そのために残業を減らす取り組みが重要です。
残業が減らない6つの原因
残業が減らない原因は、以下の6つがあります。
業務内容や量が個人のスキルと見合っていない
業務内容や量が正確に見積りされていないことが原因で、1人あたりの業務量が多くなることがあります。また、スキルと見合わない業務内容だと、個人のスキルに見合わないことで業務効率が低下し、業務を進めるのに時間がかかってしまいます。
このように、業務内容や量が個人のスキルと見合っていないと、効率的に業務を進められません。残業を減らすためには、個人のスキルに合わせた業務内容や量を振り分けることが必要です。
残業をする人が評価される風習が残っている
残業する人に対し、「多くの業務を抱え一生懸命取り組んでいる」と思う人も少なくありません。実際は急ぎの業務ではない、すぐ終わるような業務であっても、残業するだけで仕事熱心と評価されることもあるのです。
このようなことから、残業する人が評価される風習が残っている企業もあります。「決められた時間内で効率よく業務を終わらす人」が評価されない企業では、この風習により残業が減らない原因となっています。
業務目標や作業期日が不明瞭
業務目標や作業期日が不明瞭であると、業務時間内にどこまで仕上げるべきか明確ではないため、自分のペースでだらだらと業務を進めてしまいがちです。これが連日続くことで、残業の発生にもつながりかねません。
残業時間も含めた時間が定時となってしまい、残業時間が減らない原因となります。業務目標や作業期日を明確にし、いつまでに何を終わらせるのか・期日までゆとりを持ったスケジュール設定などをすることが重要です。
業務が属人化している
特定の従業員のみが対応する業務が発生してしまうと、担当者以外が業務する時に手順やノウハウがわからないといった事態が起こってしまいます。担当者にその都度問い合わせしながら業務を進めることになり、通常よりも業務にかける時間増加になりかねません。
反対に、担当者の方は問い合わせをされるたびに時間をとられてしまい、自分の業務が進まなくなってしまいます。その結果、双方の業務効率化が落ちるため残業が発生する原因となっているのです。
勤怠管理が正確に行えていない
勤怠に関するルールが曖昧、勤怠管理システムが構築されていない場合、従業員の労働時間を正確に把握できていないことがあります。この状況では、ダラダラと残業している従業員を見逃してしまう可能性も出てきます。
勤怠管理を正確に行わなければ、実際どれくらいの従業員が残業しているのか把握することはできません。残業に対して適切な対策を立てることも難しくなるため、勤怠管理を正確に行うことが重要です。
コミュニケーションをとる機会の減少
様々な関係者とコミュニケーションが上手くいくと、業務はスピーディーに進めることが可能です。しかし、コミュニケーションが上手く取れない状況になると、確認がとれず業務が進まないなど、ムダな時間が発生し残業につながる原因にもなります。
特にテレワークでは、職場でのコミュニケーションとは違い相手の状況が見えないため、コミュニケーションが取りにくくなります。意識してコミュニケーションをとるようにしないと、残業発生の原因となるため注意が必要です。
残業を減らす取り組みにて得られる効果は5つ
残業を減らす取り組みをすると得られる効果は、以下の5つがあります。
業務が効率化され生産性や品質が向上する
残業が常にある職場環境だと、だらだら仕事したり職場の雰囲気が悪くなったりします。残業を減らす取り組みをすることで、限られた時間内で成果を出す必要がでてくるため、従業員は業務効率化を意識して働くようになるのです。
業務効率化がされると目に見えて結果も出てくるため、従業員の意欲向上にもつながります。さらに業務効率化しようと取り組むようになり、結果的に生産性や品質向上といった効果が得られます。
従業員のモチベーションが向上する
残業が減ると、従業員のプライベート時間を増やすことが可能です。プライベートの時間が増えるとリフレッシュできる時間が増え、仕事とプライベートのオン・オフが上手く切り替えられるようになります。
このような状態になることで、心も体も健康な状態で仕事に取り組むことが可能です。さらに、心の余裕があることから職場の同僚とも良好な関係が築きやすく、仕事に対してのモチベーションが向上します。
ワークライフバランスが保たれ離職率防止にもつながる
残業による長時間労働が日常的になると、体調を崩す従業員が増える可能性が高いです。さらに休職者も生みやすく、プライベートを犠牲にしたくないという理由から離職者も増えかねません。
適正な労働時間で働ける環境であれば、ワークライフバランスといった仕事も私生活も良好に保たれます。その結果、離職率防止にもつながり人材が定着するため、従業員だけではなく企業にとってもメリットが多いです。
コストの削減につながる
残業が減ると、残業代といった人件費や残業に伴う光熱費などのコスト削減につながります。コスト削減は、効率性や収益性が高く経営にも直結するものです。小さなコスト削減であっても、大きな成果を得るための取り組みにつながります。
また、労働基準法の改正により、60時間超えの残業時の割増率が変更されています。残業代が上昇する傾向でもあるため、残業を減らすことは通常の労働時間にコストを抑えられるといった効果があるのです。
企業の社会的評価や信用が向上する
現代において残業の多い企業は、いわゆる「ブラック企業」と言われています。世間一般的にイメージもあまり良くない傾向です。反対に、残業の少ない企業は「ホワイト企業」と認識され、社会的評価や信用も向上しやすくなります。
そのため、これまで残業が多かった企業が残業を減らす取り組みを実施し、残業を減らし働きやすい企業に変えることでイメージアップが可能です。顧客や取引先からの評価はもちろん、就職希望者からの評価も上がるといった効果が得られます。
残業を減らす取り組み時に生じやすい3つの注意点
残業を減らす取り組み時に生じやすい注意点として、以下の3つがあります。
従業員が残業が減ることに納得していない
残業時間が減ると、それに伴い残業代も減少し収入が下がるため、残業を減らす取り組みに反対する従業員もいるかもしれません。収入を増やしたいという理由から、一部の従業員は引き続き残業を望むことも考えられます。
残業を減らす取り組みには、従業員の協力が必要不可欠です。
残業代が減った場合、その分の報酬をボーナスや基本給に充てる、業務量を見直すなど従業員の不安を払拭する施策もあわせて実施しましょう。
業務時間が取り組み前より多忙になる
残業が減ると、業務時間が残業を減らす取り組み前より多忙になるといったデメリットも生じます。そもそも、業務量が多すぎて残業している場合だと、このような状態になりかねません。
残業ができない分、業務時間中にそのしわ寄せがくるため、品質の低下や従業員同士の人間関係の悪化が起こるおそれもあります。残業が起きている原因を明確にし、業務量が多いのであれば量を調整し、多忙になるといったデメリットが生じないようにしましょう。
具体的な対策をとらないと生産性や品質の低下につながる
「残業を減らす」といった目標を掲げただけで漠然と取り組んでしまうと、従業員もどのように取り組んでよいのか困ってしまいます。具体的な対策をとらずに行ってしまうと、独自の判断で取り組むため、かえって生産性や品質の低下につながる可能性が高いです。
残業を減らす取り組みをする際は、従業員と話し合いながら決めることが必要です。具体的な対策を出すことで、それぞれの従業員が同じように取り組め、生産性や品質の向上につなげられます。
まとめ
今回は、残業を減らす取り組みから具体的な方法や成功事例も併せてご紹介しました。働き方改革により残業を減らす取り組みは、どの企業においても求められていることです。
残業を減らすと、企業や従業員にとって得られる効果が多くあります。
紹介した企業の事例や具体的な取り組み方法は、今からでも参考にできるものばかりです。これから残業を減らす取り組みを実施しようと思っている方は、今回の記事を参考にしながら行ってみてはいかがでしょうか。