病院で取り入れたいマニュアル作成のメリットやポイントを紹介！

病院でマニュアルを導入する意義

病院の目的は、患者に対して医療サービスを提供することです。ただ医療サービスといってもどのくらいの質を担保するのか基準がなければわかりません。
マニュアルの意義は、まず目的を明確化し、それを実現するためにどうすればよいかの基準となることです。

マニュアルは標準的な手順や信条を明確に示します。それを医療スタッフ全体で共有することで、目的が達成されます。
マニュアルの導入は、目的の共有を通じて、組織全体が患者に対して一貫性のある良質な医療を提供する手段になります。

病院で使用するマニュアル作成のメリット

マニュアルはなぜ必要なのでしょうか。本章では、病院で使用するマニュアル作成のメリットを解説します。

あるべき姿の指針ができる

マニュアルは、あるべき姿を一般化し、誰でも再現できるようにしたものです。マニュアルを実行すれば、誰でも同じ行動がとれ、サービスの均一性や質を保てます。
マニュアルは業務の理想形を表しているといえます。病院であるべき姿の指針が必要な理由は、患者ケアや医療プロセスにおいて、最適な結果を得るためです。

マニュアルがなければ、患者に対する対応が自己基準になり、人によってばらつきが生じてしまいます。マニュアルがあることで、医療スタッフは統一された手順や基準に基づいて業務を行い、患者に対する安全かつ質の高いケアを提供できます。
これにより、知識不足で起こる失敗などが減少し、患者への一貫した高水準の医療が確保されます。

目的達成のための業務の効率化ができる

病院では、治療にあたる医師、看護師、その他事務員、清掃や警備、病院の運営など全く違う業種の人が集まり、仕事内容も多岐に渡ります。
医療知識があっても経営はわからない、患者さんの対応が忙しくて他の事に手が回らないといったことも発生します。様々な業務に追われるようになると、肉体的にも精神的にも大変です。

そこで、マニュアル化が役に立ちます。マニュアル化というのは、誰がやっても同じ結果が得られる仕組みづくりです。マニュアルを用意すれば業務の効率化が期待できます。
マニュアル化が進めば仕事が一般化され、誰が担当しても同じ結果が期待できるようになります。万が一欠員がでても他の人がサポートできるようになると、さらに業務の効率化になります。これは、病院全体の利益につながります。

教育のための教材になる

マニュアルは、教育のための優れた教材にもなります。もし教材となるものがない場合、新しいスタッフのトレーニングが難しくなります。
教育係になるスタッフには大変な負担がかかります。また、誤った情報を学習してしまったまま患者の対応をしてしまうと、業務効率や患者の安全に影響を与えかねません。

一方で、マニュアルが教育のための教材として利用されると、スタッフは統一された手順や最新の情報を学ぶことができます。そうなると、スタッフは迅速に成長でき、高い水準で一貫性のある患者ケアができます。
教育のための教材としてのマニュアルは、教育するスタッフの負担軽減、新人スタッフのスキル向上や、医療サービスの質の確保に貢献します。

評価の基準になる

病院でのマニュアル導入は、評価の基準となることでもメリットです。
評価の基準が必要な理由は、医療サービスの質や効率を客観的に測定し、向上させるためです。マニュアルがない場合、スタッフの業務や患者ケアの評価が、評価者の主観になり一貫性が欠如します。

マニュアルが評価の基準となると、スタッフは明確なガイドラインに基づいて業務を遂行し、明確な基準で評価されます。これにより、スタッフを客観的かつ公正に評価できます。
また、医療サービスの品質向上や患者安全の確保も期待できます。さらに評価の基準としてのマニュアルは、一貫性のある医療サービス提供と、個々の課題特定や改善点の明確化にも役立ちます。

業務改善に役立つ

マニュアル化は業務改善にも役立ちます。それまで当たり前にしていた行動をマニュアル化することで改めて改善点に気づく場合もあります。
慣れてしまうと、根本的な問題が見えづらくなる場合があります。普段当たり前に行っていることに無駄が多かったり、さらに良いやり方がある場合もあります。

効率性や患者ケアの質は、継続的に向上させなければなりません。マニュアルを作り、定期的に見直すことで、最新の情報や効果的なプロセスを取り入れ、絶え間なく改善できるサイクルになるのです。

病院で使用するマニュアル作成のポイント

病院で使用するマニュアル作成ではどのようなことに注意して作成をすればよいでしょうか。本章では、マニュアル作成時のポイントをまとめます。

行動の目的を示す

病院マニュアルにおいて、行動の目的を示すことはとても重要です。行動の目的を示す理由は、判断の基準を提供することにあります。
具体的な目的が示されることで、スタッフは業務をより明確に理解し、自分の行動が組織や患者に対してどのような影響を持つのかを理解できます。判断基準の提供や新人や若手スタッフの迷いを減少させるためです。

例えば、「整理整頓が重要な仕事」をマニュアルにする場合、「行動の目的は、仕事をより早く終わらせ、書類紛失によるトラブルを防止すること。」と明記すべきです。そうすることで、スタッフは整理整頓がなぜ重要なのか理解しやすくなります。
さらに、仕事をスムーズに進めるためにはどのようなアクションをとるべきかを把握しやすくなります。また、新人や若手スタッフは、明確な目的が示されるため、余計な迷いや疑問を持たなくて済みます。結果、仕事に自信を持ちながら業務に取り組むことができます。

仕事の全体像がわかるようにする

病院で使用するマニュアル作成のポイントは、仕事の全体像がわかるようにすることです。全体像を把握することで、作業者は仕事の意味を理解し、協力と連携を通じて病院全体の目標に貢献することができます。
また、自身の作業が組織全体に与える影響を理解することで、前向きかつ効果的な行動が促されます。全体像を示す時には、仕事の意味を明確にし、自分が関わる業務全体の流れを示し、作業者が自らの位置を把握できるようにします。

そして、個々の作業者が担当する業務の具体的な工程を記述します。その際、作業者に求められる水準や質の基準を具体的に提示します。
達成すべき目標や品質基準を具体的に明示します。仕事の全体像を把握することで、作業者は自分の役割が組織全体でどのような意味を持つのかを理解でき、業務へのコミットメントが高まります。

読みやすく実行しやすくする

読みやすく実行しやすいマニュアルを作成することは、病院の業務において効果的なコミュニケーションと標準化を促進するポイントです。
まず作成時は、複雑な医療用語や冗長な表現を避け、作業者が理解しやすい一般的な表現を使用します。そうすれば、様々な知識レベルのスタッフがスムーズに業務内容を理解でき、誤解や混乱を減少させることができます。

例えば、「テーブルを綺麗にしておいて」という抽象的な指示ではなく、作業者が実行するべき「状態」や「数量」を具体的に記述し、一定の水準で作業が行えるようにします。
「入れる」といった一般的な指示ではなく、「パチンと音がするまで入れる」といった状態を具体的に示すのも有効です。その結果、作業者が同じ基準で業務に取り組むことが可能になり、個人による差異を排除できます。

表現は、不要な詳細や細かな手順を過剰に記述することなく、重要なポイントと基本的な手順に焦点を当てます。
数量や状態を明確にして簡単な表現で完結に指示をする、というポイントを実践することで、誰が担当しても同じ基準で仕事を行え、作業者全体が共通の理解を共有できる病院マニュアルが実現します。

実務でチェックリストになるよう作成する

業務で使えるチェックリストになるよう作成することも効果的です。チェックリスト化すると、効率向上や品質管理の向上、新人のサポートなど様々なメリットが期待できます。
チェックリストは手順やタスクの完了状況を簡潔に示すため、スタッフは業務全体をより迅速かつ効果的に進めることができます。新人トレーニングの際にも役立ち、若手スタッフにとっては作業手順を理解しやすくなります。

また、チェックリストで進捗状況が共有されれば、スタッフ間で連携が円滑に進みます。業務の進捗や課題が明確になり、コミュニケーションがスムーズになります。

適宜修正・改善する

病院のマニュアルは、常に変化する環境に適応し最適な状態を維持するために、適宜修正と改善が必要です。
修正と改善がなされない場合、古くなった情報が蓄積され、スタッフや患者に対するリスクが高まります。定期的な更新は、変化への迅速な対応、誤りや混乱の防止、患者ケアの最適化につながります。

医療環境は常に変動しています。定期的に、新しい技術や法令の変更があるのでその都度リニューアルが必要です。医療状況や社会の変化にともない、マニュアルに記載したことが誤りになったり不正確な情報になったりする可能性はあります。
そのままにしておけば、医療ミスや患者の安全に関わる問題になる可能性もあります。医療現場だからこそ、変化に適切に対応する姿勢が求められます。マニュアルは必要に応じて、修正・改善されるべきです。

過去の経験を活かす

病院のマニュアルを作成する時には、過去の経験（クレームやトラブル）を活かすことが重要です。過去に発生したクレームやトラブルは、その時の業務や手順に問題があったことを示しています。
これらの経験から学び、同様の問題が再発しないようにするために、マニュアルにその教訓を取り入れるべきです。過去の経験をふまえないままマニュアルを作成すると、同じ失敗が繰り返される可能性が高まります。

クレームやトラブルが生じた背景や原因を明らかにし、それを元に改善策を取り入れることで、同様の問題を未然に防ぐことができます。そのようにしてマニュアルを構築すると、実践するスタッフにとっての安心感になります。
適切な対応ができるように設計されたマニュアルは、スタッフにとって心強く信頼できるものになります。

また、過去の経験をふまえないままマニュアルを作成すると、法的な問題やリスクが生じる可能性があります。
クレームや訴訟が発生したケースを考慮し、それを回避するための具体的なガイドラインを作成することで、法的な安全性が向上します。

過去の経験をふまえることで、マニュアルはより実践的で適切なものとなり、医療提供の質や安全性を向上させる効果があります。
以後のクレームやトラブルを最小限に抑えることが結果的に、患者もスタッフも守ることにつながります。

まとめ

本記事では、病院で使用するマニュアル作成の意義や、メリット、マニュアル作成のポイントを分かりやすく解説しました。
病院の目的達成やサービス品質向上、スタッフが一丸となるのにマニュアルは有効活用できます。本記事でも紹介したポイントを、効果的なマニュアルの作成と運用に役立ててみてください。